ライスアンドカリー6幻のカリーを探して 改訂版

美味しさの連鎖、相反するカリーズハイとわびさび

 

Curry manです。日常坐臥、好物に祟りなし。今日は定休日で、行きつけのお店で豚骨ラーメンをいただいております。スープ、麺、チャーシュー、紅生姜、ネギ、キクラゲ..いつもながら絶妙に絡んでおります。ただ...声を上げて美味いとは言いません、美味い物を食べていると、人は本能的に黙るからです…。

お店のTVでは連日うんざりするようなニュースばかり流れています、幸い富山では未だコロナウィルスの感染者が0と、つくづく大きな地震、災害とは縁のない安全な所だなぁと身に沁みて思います。老夫婦が営んでいるラーメン屋の親父さんは言います。「わしらっちゃ、オイルショックも経験しとるし、長い事生きとりゃ、なんこさあるちゃ、しばらく我慢すりゃ、また元に戻るわいね」と楽観的です。東京オリンピックが開かれるのかどうなのか、今後世の中はどうなっていくのか、まだ誰にも予測が出来ない現状ですがジタバタしてもしょうがない、という事でしょうか。私も普段通りやっていきたいと思います。いつか将来、「カリー全科」を書く!という目標に向けて、このブログも何かの足しになれば良いかなとも思っています。

前回は「口の中で広がる美味しさの連鎖」について書きました。今回はその続きです。書いてるうちにまた違う話に脱線してしまうかもしれませんが、何ゆえ、素人の文章ですのでご了承ください。

 

「口の中で広がる美味しさの連鎖」それは、様々な食材からにじみ出るうまみ成分が折り重なり相乗効果によって美味しさの連鎖を生んでいるという事だと私は理解しています。うまい、うまい、うまい、の連続で食欲が無限大に広がっていく、そのような状態を私は勝手に「カリーズハイ」と呼んでいます。食品学会が呼称している「うまみの相乗効果」という正式な言い方も出来るのですが、「カリーズハイ」とは学会の言うそれとは少しニュアンスが異なります。

スパイスが入る料理を食べるとスパイスの入っていない料理を食べる時よりも「ハイ」になる感じがあります。体が温まってきてあらゆる毛細血管が開いて血流が良くなって脳がスパークするような感覚が・・・。「口の中で広がる美味しさの連鎖」はカリー以外の食べ物、例えば日本料理、中華料理、イタリア料理、ロシア料理、フランス料理、メキシコ料理、あらゆる国の料理でも味わうことができるでしょう。ただ、食欲が無限大に広がっていくというある種中毒のような感覚に陥るのはトゥクトゥクが走っている国々の料理に最も多いような気がします。トゥクトゥクが走っている国々とは日本列島を南下して東南アジアから中東辺りまでを指しています。そうです!カリーが食べられている国々です。つまり「うまみの相乗効果+スパイス=カリーズハイ(食欲が無限大に広がっていく感覚)」になりえると私は考えています。逆にそれが最も少ないのは日本料理。わびさび、一汁一菜の日本料理ではカリーズハイには中々なりえないんです。例えば、お刺身を食べる、白米を食べる、そしてお吸い物を吸う。一つ一つの所作でそれぞれの食材を別々に味わい、その余韻を楽しむのが日本料理の醍醐味だと言っても過言ではないでしょう。日本式の食べ方を極端に説明するとハンバーガーを分解すれば分かり易いかもしれません。ハンバーガーのパンを外して食べる、レタスとトマトを食べる、肉を食べる、そしてコーラを飲む。誰もこうやって一つ一つをつまんでいく食べ方はしませんよね。その方式で食べたとしてもハンバーガー本来のうまみは楽しめないでしょう。でも極端に言うとこれが日本式の食べ方になのです。極端に言うとです。ハンバーガーはやはりパン、野菜、肉を同時に食べるからこそ口の中で美味しさの連鎖が得られるものだと思います。そういう意味では日本料理は世界的にみると大変稀有な存在だといえると思います。ではなぜ日本人はこういう食べ方をするようになったのでしょうか?それを今から考えたいと思います。

世界的にみると稀有な存在の日本料理ですが、皮肉にもうまみ成分を発見したのは日本人と言われています、東京大学名誉教授池田菊苗によって1908年にこぶ出汁の中から発見し、うまみ物質はグルタミン酸だという事を突き止めました(wikipedia参照)ここで長々と発見の経緯を説明するのはこのブログの趣旨ではないので割愛させていただきますが、美味しさの連鎖に対する日本人の考え方が諸外国の料理のパターンと異なっているのです。諸外国の料理の場合、様々な食材の中から出てきたアミノ酸がタッグを組んでそれを食べる人々の味蕾を覚醒させ食欲を増進させているのに対し、日本料理の場合は新鮮な素材を個別に味えるように工夫され、それぞれの旬の良さを味わえるように設定されていると思います。日本人にとっての口の中で広がる美味しさの連鎖とは汁物の中でそれを深く味わうことによって感じ取ってきたのではないでしょうか。それこそが「だし」と「汁」の「うまみの相乗効果」なのだと解釈できます。逆に言えば、四季折々の食材に面と向かって向き合ってきた日本人だからこそ、旬の食材のうまみを一つ一つ噛みしめて長い年月を経て味覚が研ぎ澄まされ、美しい所作が生まれ、食べ物に対する感謝の気持ちが生まれ、諸外国でそれまで迷信とされてきた「うまみ」を塩味、甘み、酸味、苦みの基本味に第五の基本味として加えるという物凄い偉業を達成出来たのだと私は理解しています。

ちなみに海外から入ってきたカレーライスも、ラーメンも、スパゲティもトンカツ定食も私達が知らず知らずの内に身についた日本人特有の所作と食事法に変換されて日本国内で洗練されて来たものと言えると思います。

 

私は今、豚骨ラーメンを汁まで飲み干して、カルビを焼いています。朝から何も食べて無いので食欲がとまりません!上質なお肉を一つ一つ焼いては口に運んでいます……..。日本式の焼き肉を深く味わい、そして黙る…。これぞ正にサイレンス イズ ゴールデン!

焼き肉で今ふっと思い出しましたが・・思い返せば、あの頃・・。あの頃はしんどい時期で、あまり良い思い出でもないので勝手に忘却してしまいそうになりましたがこの話はどうやら「カリーズハイ」を説明する上で避けては通れない気がします。カリーズハイを最初に教えてくれたのが伝説のスリランカ人シェフX氏ならカリー以外のジャンルで美味しさの連鎖を楽しませてくれたのがマルコという人物です。その料理は韓国式焼き肉なので「カリーズハイ」とは呼びません、でも口の中で広がる食感、食欲が無限大に広がっていく感覚は同じようなものだったと記憶しています。次回はその韓国式焼き肉男マルコと言う人物について触れたいと思います。(つづく

(写真は喜楽のカルビ定食]

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